「世界で一番短いクリスマスツリー」

『世界で一番短いクリスマスツリー』 語り: DJちん 文責: ますだあきら

クリスマスの話。もうずいぶん昔の話をしようと思う。
そのときぼくは山梨の山奥にあるリゾートホテルで働いていて。シーズンは真にこの頃。

そのぼくが働いていたホテルというのがかなり大きなもので、その年のクリスマスというのが 24日25日がちょうど土日に重なっていたこともあり、相当な力を入れてこのシーズンを迎え、また実際に予約がかなりたくさん入っていた。

このストーリィの中心になる男の子がいる、彼はまぁいいトコロのボンボンで、言動などにはまぁそういった意味での育ちの良さがにじみ出しているような印象。

もう一方の登場人物として、そのホテルに滞在していたとあるお母さんと娘さんがいる。
その母と娘の二人連れの客は毎年来ていて、この年にも20日くらいから宿泊していた。娘さんが体がよくないということで、このシーズンには車椅子を使用していたことを覚えている。

その彼はなぜかぼくにその娘さんの話をよくしていた。不思議なくらい頻繁に。
どういう気持ちで彼女の話題を口にしていたのかは分からない。ちょっとした気まぐれか、同情心からなのか。

さて、このホテルの敷地内に立派な杉の樹がある。

その杉は間違いなくこの季節誰もが思うであろう (クリスマスツリーにはおあつらえ向き) の樹なんだけれど、「決っして触ってはいけない杉」でもあった。
ようするにまぁよくある話で、そのホテルが建てられたときにどこぞのおエラいさんから寄贈されたものらしい。

クリスマスシーズン真っ只中に突入しようというとき、

その樹に、
「ツリーの飾りをしてもいいですよね」

なんてこと言ってきたんだ、彼が。

そしてその魂胆というか、考えはミエミエで。その母娘づれの女の子のため。
その杉というのが彼女らの部屋の真ん前にあるのだから。
もちろんそんなことを許可できるわけもなく、ふざけるな! と一喝して。彼はかなり喰い下がりはしたのだけれど。こっちは仕事が手いっぱいで目が回っているということもあって、そんなことに考えを向けることもしなかった。

雪が。
24日に大雪が降った。そのため滞在予定のお客さんもキャンセルが多くなってしまった。一番盛り上がるであろう日付にそんなことになってしまい。

そして、25日の夜。
この日は特別で、お決まりのサンタ恰好で各部屋へちょっとしたプレゼントと、夜に行なわれるライブのお誘いをして回ったのだが。

その母娘の部屋へ行ったとき。
それまで、部屋の外でその母娘に会うことはなかったと思う。それで本当に娘さんの体調が悪いのだろうなと思っていたこともあって、ぼくのサンタの扮装を彼女が笑ってくれたときにはちょっとホッとしたことを覚えている。

結果としては観客がなかなか揃わなくて少し淋しいライブになってしまった。(売り出し前のゴスペラーズであったのだが)
それが終って片付けをしてから、ぼくは自分らのパーティに向うために車に乗った。

でもなにか胸騒ぎがして、車を別の方向に回してみたんだ。
彼が問題の杉の傍らで脚立に乗っていた。「なにやってんだ」て訊くと。

自分で業者に連絡して、自腹切って電飾借りて。独りで飾りつけをして彼女に見せようとしていたらしい。

無論のことこちらは怒り心頭。

でもね、気がついたら一緒になって電飾をその樹に巻きつけていた。
彼の思いがぼくを動かしたとか、彼が彼女に見せてあげたいという気持ちのことを思ったとかじゃぁなくって。
たぶん見たくなったんだろうね、この樹がクリスマスツリーになったところを。想像してしまったのだろう。

しばらくしたらやっぱり見つかってさ。
副支配人に部屋に呼ばれて、「なにやってんだ!」て大目玉。あたり前のことだから仕方ないんだけど。
あれこれいいわけをして半ば強引にそこを抜け出すと作業を再開した。

その頃になるとギャラリがけっこう集まってしまっていて。20人くらいいたかな。ホテルの泊り客なんだけど。

やっとなんとかあるだけの電飾を樹に絡ませ終って。

それから電気を入れてみたんだ。

突貫がたたって、実際には3分の1くらいしか点かなくって、でも皆なからは歓声が上がった。ギャラリの後ろで副支配人が拍手しているのが目に入ったのはおかしかった。

彼はというと喜びいさんで彼女の部屋に向った。

見上げたその窓のカーテンが開かれたとき、その母娘のシルエットしか見えなくて、どういうリアクションだったのかその瞬間は分からなかったんだけど。

少ししてぼくも彼女らの部屋へ行ってみた。
嬉しいことに彼女はすごく感激してくれたらしく、彼の手を握っていた。ぼくの手はというと喜んでくれたお母サマに握られていたんだけど、こちらはあんまりありがたくはなかったなぁ。

下に戻ると、
彼はぼくに土下座をした。でも怒る気にはなれなかった。なんかね。打たれた、あんまりバカで。

二人で近くに座って、黙ってしばらくぼくらのツリーを見上げていた。

そうしたらキッチンから来た女の子が、シェフから預かってきたという、ホットワインを差し出した。
いっつもぼくらのやることなすことに否定的なあのシェフが、どこからか見ていたらしい。

ありがたくいただいた。すごく美味しかった。

また二人で二時間かけて取り外し作業をした。寒かったし、さんざんな目にあったし、明日はきっとまたぞっとしないことになるんだろうけど。なんとなく悪くないクリスマスだと思った。


24日夜に AirBonchi「犬たち」の中でちんさんが話された内容を、管理人ますだが、酔っぱらった勢いで文章に起したものです。
アルコール脳の記憶にのみ頼って書かれたものなので、実際ちんさんの話された内容と違う部分がかなりあります。
DJ からは掲載許可をいただきました。ありがとうございます。

そして、メリー・クリスマス。

##
タイトルを修正いたしました。「世界で〜」
こちらの方がおさまりが良いであろうと。

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メリークリスマス。

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コメント(3)

ありがとございます。感激です。
でも私は絶賛燃え尽き中です。

こちらこそありがとうございました。
AirBonchi での紹介も。いろんな名前で呼ばれてますケド。

「世界で..」 がついてたんでしたっけ??
その方が良さげですね、タイトル変えていいですか。

わはは。すみません間違えてつけちゃった。です。
そうしましょうか。「世界で一番短いクリスマスツリー」に
お気に召したのでしたら。
けてい!(いい加減)

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