おとこ3人・・
連載18 (Ver1.0)
◆ ◇ ◇
「やっぱり、思うのですけど」
(ヒュンッ)
「Pilot に、それ程、大きなメモリは要らないと思うのです」
(カリカリ)
「そう?」
(シュッ)
(ポシャ)
「有れば、あるだけ使うぞ」
(シュンッ)
「SuperPilot の II XL *1 は、8M でしたっけ?」
(バシャッ)
「最近は、やたら、メモリ喰うアプリとか増えましたもんね」と有川くん。
「確かに、初期の頃とは違ってきていますけど。PalmIII が標準で 2M ですから、そういう流れになってしまうのは仕方がないでしょう」タタさんが答えます。
「結局さ、ハードディスクと同じで、あれば有るだけ消費してしまうものだって」誠司さんも云います。
そうかなぁ、有川くん、いまいち納得行かないようです。続けて、ロッド(竿)を振ります。立ち木の向うへ、ルアーが落ちます。(ポシャ) その近くを掠めるようにして、リールを巻いていきます。(カリカリカリ)
「そんなこと云って、そろそろ、欲しいころじゃないの?」誠司さんは彼に向ってそう云います。もちろん、体は湖面を向いているのですが。誠司さんというのは、これまでにも幾度か顔を出した、高原さんの旦那さんです。
「時間の問題でしょう」タタさんも、当然という感じで云い放ちます。
「そんなことないですよぅ」と、答えますが、自信は少し無さそうです。
今日、会社は休みです。誠司さんともスケジュールが合ったので、久しぶりに3人、遊びに来ています。ダム湖で、バス狙いです。3人乗りのボートを借りて、漕ぎだしました。しばらく、投げているのですが、まだ、誰も釣ってはいません。
それなりに手数は投げているのですが、どうも旗色が悪い様子です。このメンバーでは、自然 コンピュータや、Pilot の話題が多くなります。有川くんは、早くも集中力が切れてきました。
「ASAPP *2 を結構やり込んだんですよ」そう云って、巻ききったロッドをボートの中に置くと、おもむろに PalmIII を取りだしました。
「おまえ、ここに持ってきたのか?」
「非常識ですねぇ」
「大丈夫ですよ」
自慢げに出したそれは、ビニールのパックに入っています。
「Aqua Pack *3 があるから、落としても安心です」
「いや、そういうことを云ってるんじゃなくてね・・」
昼前から、夕方近くまでロッドを振っていたのですが、結局その日は誰にも、釣果はありませんでした。
「まあ、こういう日もあるさ」誠司さんが云います。
「有川くん途中から、全然やってなかったじゃないですか」
「まあ、そういう日もあります」よく分かりませんが、そういうことらしいです。
旅館の部屋に戻って一休みしました。まだ、明日一日ありますから、そちらにかけることにします。夕食前に温泉に入るというのが、定番ですが。
「その前に・・」
誠司さん、バックから、ノートパソコンを取りだしました。
「そうですね、メールは見ておかないと、」タタさんも、Pilot と、Pilot Modem を取りだします。有川くんも然り。
しかし・・
「ああっ」電話を見ると、モジュラーではありません。
「今時、珍しいですね」「タタさん携帯は?」
「あれは会社のものですから、プライベートには持ち歩いていないです」
ふたりして、誠司さんの方を見るのですが、「ケーブルを忘れた・・」という返事が返ってきてしまいました。仕方なく、旅館の外にあった『グレ電』を変るがわる使ってなんとか通信しました。
(電話が使えないのですか?)と、旅館の人に訊かれる始末です。
「変な、お客さんでしょうねぇ」タタさんがしみじみと云います。
特に問題のあるメールは無かったようで、3人揃って温泉ということになります。
「誠司さんのノートって、IrDAポート付いているのですか?」露天の岩風呂に浸りながら、有川くんが訊きました。
「ついてるよ」
「IrSync *4 って試してみました?」
「だから、おれのは、PalmIII じゃないだろ」
そうか Upgrade しないと・・有川くん、どうもそのアプリが気になっている様子です。
「今日は、不思議なほどダメでしたね」タタさん気持ちよさそうに、夜空を見上げながらそう云います。あまり、残念そうには見えません。
「明日は早くから、出るんですよね」
誠司さん、当然、というように頷きます。「明ける前に出るからね。そんなに飲んじゃ駄目だよ」
それを知って有川くん、非難の声を上げますが。軽く一蹴されてしまいます。
「それじゃ、美味しく夕食をいただいて、早目に寝ることにしましょう」タタさんが云います。先輩ふたりにそう云われてしまっては、云い返すこともできません。
「それから、有川。PalmIII を持っていくのは禁止」
「どうしてですかぁ」
折角、アクアパック買ったのに、と云います。どうも、このために新調したもののようです。ぶつぶつ云っている有川くん、顔の半分あたりまで、お湯の中に沈めてしまいます。ぶくぶくと泡が起っています。
空をずっと見ていたタタさん、思わず、呟きました。
「いい月ですね」
ふたりも、つい、夜空を見上げます。
◇ ◇ ◆
註
*1: TRG 販売のメモリ増設用パッケージです。
*2: しゃあみんさん作成、プログラミング型対戦ゲーム。
*3: Pilot が濡れないようにする、ビニール製の入れものです。IKE Shop 販売元。
*4: IS/Complete,Inc 作成。赤外線通信で、HotSync を可能にするアプリケーションです。

