1998年4月アーカイブ

強敵
連載12 (Ver1.1)

◆ ◇ ◇

 その日、タタさんは少し遅めに出社してきました。というのは、前の日に、ボリュームのある会議の資料を揃えていたために夜遅くなったからです。昼過ぎから再度、客先で打ち合わせです。まだ、話が固まっていないプロジェクトですので、何としても今日の打ち合わせで話をまとめたいと気合が入っています。
 デスクに座って、まず、Pilot を Cradle に置きます。Sync ボタンを押したところで、声がかかりました。
「タタさん、コーヒー入りました」
 三奈月さんです。ありがとう、と云ってカップを取り出します。机にそれをのせて、彼女がサーバから注ぐのを横目にディスプレイの電源を入れます。
 気のせいでしょうか、三奈月さん、ちょっと顔が上気しています。しかし、タタさんはそこには触れずに、今日の打ち合わせの件を彼女に伝えます。プロジェクトとして立ち上がるなら、三奈月さんも関ることになりそうです。
 三奈月さんが行ってしまうと、入れ替わりに高原さんが話しかけてきました。なにやら、楽しげに笑みを浮かべています。
「なにか、あったのですか?」
「まあね」どうも、つい笑みがこぼれてしまうといった感じです。
「かわいいじゃないの」
 と云います。思わず、タタさん自分を指さして首を傾げます。高原さん、苦笑いです。
「どうして、タタさんが(かわいい)わけ?」
 気が付きました。確か、三奈月さん、「タタさん」と云いました。この愛称で三奈月さんが彼を呼ぶのは初めてのことです。

 数日前に、タタさんは新入社員の人たちに対して、研修を行っています。「インターネット上でのサービス」に関しての話が中心でした。
 彼自身、人の前に立って説明をするということは決して、不得意なことではないのですが、どうも反応がいまいちよくありません。研修としては、すでに大詰めの段階に入っていますから、もう少し身を入れて聞いてもらいたいところなのですが。
「あの、田中さん」
「はい、」
 一通り話しは終わって、拡げた資料を片付けていたところ、声がかかりました。顔を上げると、一番前に座っていた女の子です。タタさんの印象では、一番しっかりと話を聞いていてくれた人です。
「Pilot ですよね?それ」と机上のそれを指さします。タタさん、研修の進め方を Pilot にメモ書きして、それを見ながら話していたのでした。
 ちょっと驚きます。
「よく、知ってますね」
「私、持っているんです」そう云って、彼女はポケットから PalmPilot を取り出します。
「でも、そんなにちゃんと使っていないんです」と云う彼女、アドレスとスケジュールを中心に使用しているだけのようです。貰ったものだから、J-OS などは初めから入っていたそうです。
「あと、パッケージを幾つか一緒に貰いました。QuickPac *1 とか、HandStamp *2 とか・・」それは、単純に、要らないからくれたということでしょう。
「パソコンはあるのですよね」
「ええ、ノートがあって、そこで Sync しています」
「会社なら、ネットワークが早いですから、いろいろ探したり、落としたりしやすいですよ」と云うと、
「そうですよね、Cradle 持ってこようかなぁ」
 タタさん、資料をそろえるようにしながら、座席表をちらりとみます。彼女の席にある名前は「岡崎マキ」さんです。

 タタさんの研修講師の最終日。午前中に話を終えたタタさん、慌ただしく、そのまま食事もとらずに、会議に直行です。
「ご一緒しても、よろしいですか?」
 高原さん、有川くん、三奈月さんが昼食を取っていたら、話しかけられました。新人の女の子たち数人がトレイを持って立っています。高原さんが何日か講師として研修を行ってますから、顔見知りになっています。
 テーブルに座ると、高原さん、他のふたりを紹介します。有川くん、つい、顔がにやけてしまっている様子。簡単に挨拶から始まって、それぞれで、会話が始まります。
「岡崎さんって Pilot を持っているんだって?」有川くん正面に座った彼女に訊きます。
「はい」
 そこで、有川くんとマキさんが二人で盛り上がってしまいました。彼は内ポケットから、PalmIII を取り出して得意げです。
 高原さんたちは他の子たちと、会社の印象などを聞いています。話してみると、特にコンピュータに興味があって入社した、という人はほとんどいないようです。
「三奈月さん、DirectSync *3 って、今、会社にある?」
「ええ、持ってますけど」Pilot 同士でデータ転送するから貸して欲しいと云います。快諾して、後で持っていくと答えました。
 突然に、マキさんが云いました。
「田中さんって、結婚しているんですか?」
 その時、高原さんは、三奈月さんの眉がピクリと動くのを見逃しませんでした。
「タタさん?まだ、みたいだけど」有川くんが答えます。
「タタさんって?」
「『田中太郎』さん、だからタタさん」
「ふうん、雰囲気にぴったりですね」マキさん、そう云ってにっこり笑います。
「じゃあ、タタさん、付き合っている人は?」
 今度は、三奈月さん、口元が痙攣した様になります。
「さあ、わからないよ。プライベートなことは」そう云うと、高原さんの方を解答を求めるように見ます。
「いまは、フリーみたいだけど」高原さん答えます。
「そうなんですか」そう云って、マキさん、さらに楽しげに微笑みます。
 どうしたんですか?目の前の女の子にそう云われました。三奈月さん、はっとして、止まっていた箸を動かします。しかし、それも、少しおかしな動きです。そんな様子を、高原さんはわけ知り顔で、楽しげに眺めています。

◇ ◇ ◆


*1: Landware 作成の Pilot ツール集です。
*2: モデムが発売された当時は、通信の手段がこれしか有りませんでしたので、その頃にモデムを購入した人はみなさん持っているはずです。
*3: Pilot 同士を接続して直接データの転送を行います。TealPoint 制作。

セカンドマシン
連載11 (Ver1.0)

◆ ◇ ◇

(あれは)
 朝の通勤電車の中、有川くんは頭ひとつ抜き出ている、タタさんを見つけました。人の中をかきわけて、そちらへ向かいます。
「タタさん、おはようございます」
「おはようございます」タタさん、答えてくれます。
「なにか、いいことでもありましたか」
 有川くん、そんな顔をしている様です。そう云われると、彼はスーツの内ポケットに手を入れました。取り出したのは、
「おお!やっと来ましたか」
「はい!」
 彼の手にあるのはまさしく、PalmIII *1 です。ディスプレイのカバーが、曲線を描いていて、とてもおしゃれです。そのカバーをおこして、タタさんに見せてくれます。タタさん、手に持ってみますが裏側が丸みを帯びているので、手のひらにとてもフィット感があります。
「あれ、少し小さくなっていませんか?」
「そんな感じに見えますけど、実際、厚みは変わっていないみたいです。角が取れたからそう思ってしまうのですけど」
 スタイラスペンを取り出してみると、これもまた、形状が少し変わっています。
「重いですね。やっぱりこのくらいのほうが、安定して書けますよね」と云って、液晶の上をなぞってみます。
「もう一本、プラスチックだけでできている物も入っていましたよ、使わないと思いますけど」
「接続用の端子にもカバーが付いたのですね。ここ、いつもメディアで突っ込まれていましたからねぇ」そう云って、彼にそれを返しました。
 有川くん受け取ると、「もう、随分、手になじみましたよ。ほらこんな風に」と左手に PalmIII を持って片手で、ディスプレイカバーを開こうとします。途中まで、開きかけたのですが・・
「ああっ!」ふたりして叫びます。
 彼の手から、PalmIII は離れて、そのまま鈍い音を残して床に落下しました。カバーは外れて飛んでいっています、思わずかがみ込む有川くんが目にしたのは、無残に砕けたディスプレイです。目の前が暗くなっていきます。

 いつもの時間です。Pilot をまさぐって引き寄せ、起床のダイアログを閉じます。有川くんが前から使っている Pilot です。
 布団を抜け出して、パソコンデスクの方を見ます。そこには、新しい Cradle に収まっている PalmIII がありました。彼は、しばし、布団の上にあぐらをかき頭をがしがしと、掻きます。
「夢オチ?」

「ああ!来たんですね」
 三奈月さんがそれを見て云いました。有川くん満足そうに彼女に頷きます。
「思っていた以上に、格好が良いですね」でも、電車の中で見せてくれなかったのはどうしてです?と訊きます。
 実際、朝の電車の中でタタさんに手にしたことを報告したようです。有川くんの周りにちょっとした人だかりができました。
「ばかだねぇ、二つも買ってどうするのさ」という声もあります。
「それは、これから、こいつに対応したソフトとか、ツールとかアクセサリとか出てきますから、いいんですよ」
「IrDA が面白そうですね、対応したソフトもリリースされるんじゃないですか」タタさんも云います。
「Cradle に置きやすくなっていますよね、今まではしっかり挿す感じでしたけど、新しいのは、本当に乗せる感覚ですよね」と、これは三奈月さん。
 高原さんが訊きます。「ソフトはどうなの?」
「いろいろ、試しているのですけど。私の使う範囲ではほとんど問題はないです。まず、J-OS *2 がちゃんと使えています。一部、フォントの関係で問題があるらしいですけど、使い方によっては全く大丈夫です。意外なんですけど、Hack *3 系のものが今まで通りに使えています」そう、云います。
「へえ、それじゃ、もうそれが、メインマシンなの?」
「そうですね。バックライトも付きましたし、使用としてはこちらの方が使えるようになってしまっています」
 前の Pilot は? とみんなが訊きます。
「ああ、ありますよ」そういうと、引き出しを開けて中から取り出します。Pilot と、PalmIII 並べて置きます。
「こうやって見ると、前のはちょっと武骨に見えますね」思わず、みなさんも頷きます。
「もう、Pilot の方は使ってあげないのですか?」三奈月さん、(ちょっと、かわいそう)といった口調で訊きます。
「セカンドマシンですね」
 有川くんきっぱりと云い放ちます。

 やるべきことは、幾つかあった有川くんですが、結局その日は PalmIII のツール、データのインストール。関係する情報の収集に明け暮れてしまいました。
 Web で既に置かれている、情報のリンクを辿っているうちに、有用なデータがいろいろ集まってきました。パソコンのディスプレイを見つめながら、たまに首を巡らせて、Cradle の PalmIII を見、「にやり」とする彼は、とても不気味だったことでしょう。
 終業時間を過ぎても、帰る気配はありません。彼の部屋では Modem を使用するしかないので、情報を集めたり、ダウンロードしたりするのは社の方が断然、楽だからでしょう。
 無意味にバックライトを点けながら、PalmIII を手にしています。別にこれといって何かしているわけではないのですが、なんとなく眺めてしまっています。見惚れているといった感じでしょうか。
 眺めているうちに、アドレスのデータに食い違いがあるのを見つけました。どうしたのかある部分だけ、古いものが入ってしまっています。Sync はもう、今日何度もしてしまっているので、Desktop のデータも同様のはずです。さて、どうしたものか。
 と、引き出しの Pilot を取り出します。こちらにはちゃんとしたデータが入っているのではないでしょうか。
 立ち上げます・・ しかし、電源が入らないようです。考えますが、電池はついこの前に入れ換えた覚えがあります。
 何度か、スイッチを押してみますが、やはり、起きてはくれないようです。
「あの、もしかして、怒っています?」
 有川くん、Pilot に向かって問いかけてみます。

◇ ◇ ◆


*1: 遂に発売された、Palm Computing のニューマシンです。
*2: 山田達司さんの作られた、日本語環境です。これを無くして、Pilot で日本語を扱うことはできません。現在、PalmIII の対応にあたってくださっているとのことです。
*3: HackMaster のツールたちのことです。HackMasterは、 DaggerWare 作成。システムに、パッチを当てるためのツールです。J-OS もこの上で動くことになります。

coming-out
連載10 (Ver1.1)

◆ ◇ ◇

 その朝、三奈月さんは、電車の中で Pilot にペンを走らせていました。購入当時は人前で、取り出すのは躊躇われていたのですが、いまではもう気にならなくなりました。自分で思っているほど、他人は自分のことを見ていないようです。
 友達へのメールの返事を POBox *1 と、Pop! *2 を駆使して書いていきます。それに夢中になっていたせいで、近づいてくる人に気づきませんでした。
「おはよう」
 びっくりして、声の方を見ると高原さんが立ってました。かろうじて、答えます。
「お・・はようございます」
「それは、誰の Pilot?」
「あの・・」こうなっては、隠し通すこともできないようです。購入したことを、彼女に話しました。高原さん、旦那さんやタタさんたちが使うのを見ているのですが、直接は触れていませんので、三奈月さんが Pilot とどのくらい付き合っているかは判断できなかったようです。流暢に入力しているところを、有川くんなどが見たとすれば最近購入したとは思えなかったことでしょう。
「ふうん、タタさんとか有川くんとかのを、見ていたら欲しくなっちゃったんだ」と、思ったようです。三奈月さんにとってはありがたいことに。
 しかし、これで、タタさんたちに黙っていることは難しくなってしまいました。それもまた、良い機会になってくれるといいのですが。これまでは、とにかく三奈月さんの思惑の中でしかありませんでしたから、高原さんに知られてしまった以上は、タタさんに報告するという勢いができました。内心、ほっとした気持ちもあります。
 旦那さんの愚痴を、楽しげに話す高原さんと、会社へと向かいます。

「PalmIII を注文したんだって?」タタさんが訊きます。
「ええ、まぁ」有川くんが、仕方なさそうに答えます。
「この前、あんた、なんて云ったっけ」高原さんが、この前の昼食時の会話を混ぜっ返します。
 しょうがないじゃない、事故なんだから。とかなんとか、有川くんが弱気な声で云います。タタさんも高原さんも、半ば予想していたことなのでそれ以上は攻撃してきませんでした。
 三奈月さん、その会話を聞きながら最近のことを思い起こしています。実は彼女も、もう一歩で購入してしまうところでしたが、なんとか踏みとどまったのでした。彼のように、とても PalmIII が欲しくなってしまった、というのとは違うのですから。
 昼食時、いつものメンバーで社員食堂に来ています。自然、話題が Pilot に向いたのですが、普段の癖か、なかなか三奈月さんは話に絡めません。そういうことが続いていたので、変な抑制が働いてしまうようです。そんな彼女を高原さんが不思議そうな面持ちで見ています。三奈月さんは、すぐに Pilot を手にしたことについて話題にするかと思っていたのですが、いつも通り Pilot の話に口を挟まないでいるのです。
 どうも、単純に、衝動買いをしてしまったというのとも、違うのではと思えてきています。もしかして、ずいぶん前から持っていたのでしょうか?でも、なぜ自分たちに黙っているのかが分かりません。
「まだ、届かないんですよ」「そうなの?」
「なんか、遅れているのですかね」
「メールで、お知らせとかは」Web で注文したとのことなので、確認のメールが来ると思うのですけど。とタタさんが云います。
「メールは、2通くらい来ましたけどね」
「来ましたけど、なに?」
「ぜんぶ、英語なんですよ」有川くん以外が、滑るようなリアクションをとります。

 結局、三奈月さんは机の引出しの中から、Pilot を取り出せないでいます。
(どうしよう、高原さんに変に思われているだろうな)
 というのが、彼女の心情です。その高原さんは、昼過ぎから客先での打ち合わせに出かけていってしまいました。実際、彼女も不審に思っていたようですが、何も云いはしませんでした。
 午後のコーヒーを淹れようと席を立ちます。豆を挽き、フィルタをセットするとメーカーの電源スイッチを入れました。いつもはこのまま、お湯が全部落ちてしまうまで、しばらくの間放っておくのですが、今日はなぜか、落ちていく液体をずっと見つめていました。できたコーヒーをタタさんにおすそわけしてから、自分のカップにも注ぎます。タタさんは、ディスプレイに集中していましたが、このときだけは笑って「ありがとう」と云ってくれました。
 椅子に座って、クリームだけを入れたそれを口にしました。自然、ため息が、ひとつ。

 集中力がなかなか上がらずに、効率も悪かったようです。いつもよりも、ずいぶん遅くなってしまいました。三奈月さんは、引き出しから Pilot を出してジャケットの内ポケットに収めました。顔を上げると、タタさん、有川くんがまだ残っています。有川くんはしばらくはのんびりできると云っていましたので、仕事が押していて残業しているということではないようです。
 三奈月さんが帰り支度を終えて、ドアへ向かおうしたとき、二人がちょうど頭を突き合わせて、それぞれの Pilot を握っています。つい、覗いてしまいました。
「面白いものがあるのですか?」
「いや、面白くない」タタさんが憮然と云います。有川くんを見ると、
「だから、早く OS を アップグレード しないからですよぅ」
 未だに、タタさんの Pilot は、5000 のままですから、最近のアプリケーションがインストールできなかったそうです。
「いま買うのは、得策ではないって云ったじゃないですか」
 それは、OS の 2 を使っている人のことです。有川くんが無情に云います。思わず笑いが込み上げてくる三奈月さん。
「PalmOS 3 の アップグレード を待っているということですか?」
「まあ、そのつもりだったのですけど、そんなに高いものでもないし。買っちゃってもいいですかね」
 有川くんは、そうですね、と答えますが、本心かどうかは分かり兼ねます。
 そして、「しかし、よく、512k のメモリで使えていますね」と、さらにとどめを刺すように続けます。
「おそらく、君みたいな人が近くにいなければ、なにも、気にしなかったでしょうね」
「そうですね」おもわず、三奈月さんも相づちを打ちます。よかったですねぇ、有川くん何食わぬ顔でそう云います。褒めているわけじゃないですよ、タタさんは渋い顔です。
 その時に、アラーム音が響きました。
「あれ、」男性二人は、それぞれに自分の Pilot を見ます。そこには特にメッセージは出現していません。ふたり、顔を見合わせます。そして、お互いに首を振ります。 それから、自然に三奈月さんの方へと視線が移動します。
「Pilot のアラーム音ではないのですか?」
「いえ、いまのは明らかに System Sound Hack *3 のメロディでした」さすがは、有川くんです。
 携帯電話だと答えようとしたのですが、そう云われてしまっては、他の音だということはできません。三奈月さん、ポケットから Pilot を取り出して二人に見せました。Pilot が3つ、
「じつは・・」

◇ ◇ ◆

-- 註
*1: 増井さんが作成された、日本語入力用ソフトです。
*2: 定型的な文字列を入力するための Hack。Rick Bram さん作成。
*3: Pilot のアラーム、クリック、エラーなどの音を設定できます。青柳さん作成。
<-->

宴の始末
連載9 (Ver1.2)

◆ ◇ ◇

 猫の声がしたような気がします。

 頭がくらくらして、瞼が重いのです。鼻の辺りにざらりとした感覚。そしてもう一度、猫の声。

「又八郎さん?」目を開くと、タタさんの愛猫が見上げています。狭いと思ったら、どうやら車の中のようです。足の方には空瓶のつまった、ビールケースがあります。変な体勢で眠りこけていたせいで、体のあちこちが痛みます。やっとのことで体を起こしました。

 眠り込んでしまったので、車の中に放り込まれてしまっていたようです。ロックを外して車の外へ出ました。又八郎さんも一緒に出てきます。

「ううさむ・・トイレはどこだよ」

 タタさんたちは例年通り、2次会に行ってしまったようです。この辺りのお店とは思いますが。もっとも、タタさんは車ですから、彼はそれを冷ますためにアルコールはやめていることでしょう。

 用をたして有川くんが戻ってきました。又八郎さんも帰ってきます。「さて、どうしましょうか」なぜか、彼、又八郎さんには敬語です。車の中に戻るのも変なものです。見ると近くに、自動販売機が並んでいます。ポケットから、潰れた煙草の箱をとりだして、煙草を真っすぐに伸ばしてから口にくわえます。火を点けて、今度は反対のポケットをさぐって財布をとりだします。煙草と、ビールを販売機で買います。いつもはあまり独りで飲むことも無いのですが、どうやらそういう気分です。

 販売機の前が明るかったので、その前の段差に座り込みます。又八郎さんも隣に腰を下ろします。車の中から余っていた、紙皿を持ってきて、彼にも注ぎます。嬉しそうに啜り始める又八郎さんを見ながら、有川くんは新しい煙草の箱を開きました。

 点けると、今度は内ポケットから Pilot を取り出して、電源を入れます。モデムとPHSも出してきて、POPJ *1 でメールをチェックします。やはり、今日完了したプロジェクトに、その後に問題が起こっていないか気になります。見てみると、問題があったということはなく、完了の確認と、お礼のメールが来ていました。緊張感がまたひとつ抜けていきました。

 緊張の解けた有川くん、今度は、SFCave *2 に夢中になり始めました。曲線を描きながら移動して、障害物をパスしていきます。単純であるがゆえについ、集中してしまいます。そうしていたら・・

「こぉら、なにしてんの!」

 夢中になって Pilot を見ていた、彼の前に仁王立ちした女性が出現しました。

「あれえ、みゅう。なにしてんの?」

「はあ?自分で呼んでおいて、なに云ってんのよ。こんなところまで呼び出して」

「へ?おれが呼んだの?」自分を指さして云います。そうよぉ、彼女が云います。美由さんによれば、有川くん酔った勢いで彼女を強引に呼び出してしまったようです。恐らく、車の中から PHS を使用したのでしょう、彼は全然覚えていないのですが。

「あたし、パーティ中だったんだよ」そういえばいつもより、ドレスアップしているようです。

「合コン?」「バカぁ」

 それでも、抜け出して有川くんのところに来てくれたようです。

「お花見はもう終わったの?」

「そうみたい、」

「みたい、ってまた寝っちゃったんでしょう」

 だね、そう云って煙を吐き出します。またぁ、と云って彼の足下を指さします。そこには、吸い終わった煙草が散らかっています。仕方なさそうに有川くん、それらを集めます。

「スーツでそんなとこ、座っちゃ駄目でしょう?」

「大丈夫、ほら」そう云って、座り込んでいる場所に新聞紙を敷いていることを示します。

 美由さん、有川くんの隣に腰を下ろします。そして、先程から気が付いていたことを訊きます。

「その子は?」

「タタさんのところの、又八郎さん」

 そう云うと、又八郎さんが一声鳴きます。「ああ、田中さんのところの」そう云って彼の咽喉を撫でます。満足そうに、又八郎さんが咽喉を鳴らします。

「はい」ビールの缶を彼女にも渡します。美由さん、それを受け取ると口を付けました。

「せっかく、良いワイン飲んでいたのに・・」と云うのへ

「ああ、ワインもあったよ。買ってこようか?」

「いいよ、これで」

 又八郎さんが彼女の前に来て、それをねだります。彼女も紙の皿にそれを注ぎました。

「仕事は?」このところ、彼があまりにも忙しくて、なかなか逢っている機会も無かったのでした。

「無事、完了です」敬礼の形をしながら、有川くんは答えます。

「そう、大変だったね。おつかれさま」

 ありがとう、と云うと美由さんの肩に頭を凭れます。こら、と云って頭を押し戻しました。彼は、優しくしてくれてもいいのに、とつぶやきます。そうして、また新しいビールの缶を手にします。

「もうやめたら?」

「はいはい、これで最後だよ、どうせ。わぁっ」プルを引くと泡が吹きこぼれました。あわてて、口をつけます。

「帰らないの?」

「ここに居れば、タタさんが家まで送ってくれるよ」

「ふうん、私も送ってくれるのかな」

「大丈夫、そんなに遠いわけでもないしね」そう云うと缶をあおります。

「こら、もう止めなさいって」美由さん、缶ビールを奪いました。そうすると、有川くんはくわえ煙草のまま彼女に再度凭れてきました。仕方なく今度はされるままにして、口の煙草を取り、靴の踵で踏みつぶします。

「寝たけりゃ、寝なさい、もう」

 そう云うと、着ていたハーフコートの片腕を脱いで彼の肩にかけました。早くも小さな寝息を立て始めた、彼の顔を見て、くすりと笑います。

「まぁったく」そう云いますが、顔は嬉しそうです。

「明日の、約束は覚えているんでしょうね」

 又八郎さんが、彼女の前に来てねだります。はいはいと、お皿に残りのビールを注ぎました。すぐに、飲み始めます。明らかに有川くんよりはアルコールに強いようです。桜の花びらが、落ちてきて足下に溜まっています。

「田中さん、まだかなぁ」

 とつぶやきます。それに答えるように

「みゃおう」と又八郎さんが鳴きました。

◇ ◇ ◆

-- 註
*1: 村上さん作成。有川くんが愛用しているメールクライアントです。
*2: 1Key 入力のアクションゲームです。Sunflat 作成。
<-->

春の宴
連載8 (Ver1.0)

◆ ◇ ◇

「それではそういうことでお願いします」
 そう云って、タタさんは携帯電話を切りました。そして、それをポケットに収めると作業の続きを再開します。ビニールの青いシートを拡げました。これで最後です。
「タタさん」高原さんが来てくれました。
「早かったですね」
「お花見とあっちゃぁ、仕事なんてしてらんないわよ」なんてことを云います。タタさんは苦笑をしながら、その場を離れます。
「じゃあ、よろしくお願いしますね。受け取りに行ってきますから」
「有川くんは?」「ああ彼は・・」
 いつも、率先して手を貸してくれる彼ですが、今回はタイミングが悪く、ぎりぎりまで、システムの最終チェック作業をしなければならなくなっています。実際に作業にあたっているのは彼だけなのですが、一緒にプロジェクトを進めている他社のスタッフとテストをしているところです。
「たまには、修羅場も体験しないとね」高原さんそう云って、シートの上にちょこんと座ります。要するに、場所取りのひと、というわけです。彼女は、いま客先から直行したところです。打ち合わせ中も持参した、カバンの底には実はワインボトルが2本ほど入っています。毎年しているように近くの川で、冷やしておきます。とられないように、マジックでしっかりと名前を書いてあります。もちろん、彼女の名前ではなく、会社の名前です。
「たかはらさーん」
 三奈月さんたちも到着です。数年前から、隣接するグループも、ご一緒するようになったので、全体の出席人数はとても多いのです。その人たちも段々に集まってきました。

 そんなわけで、オフィスはほとんど、もぬけの殻です。
 有川くん、ぽつんと独りで、ディスプレイに向かっています。まったく、ついてないよ、なんて云っているようです。実際のところ、すでにシステムは立ち上がっていて、エンドユーザにも公開されている中、最後のテストをしているところです。最初のころ、サーバとプログラムともに、落ちたことがあったのですが、チューニングとバグのフィックスをして、いまは元気に動いているように見えます。今日の終業時間が最終のラインということになっていますので、とりあえず、それまでに何事もなければ大手を振って花見に駆けつけられるわけです。
 すでに何回も繰り返した作業を続けながら、時計を睨みますが、時間は早く進んでくれないようです。
「うう、腹減った」そういえば、昼はコンビニのおむすびで済ませてしまったのでした。

 タタさんがお酒と料理を調達して戻ってきました。車から運ぶのを、他の人に手伝ってもらいます。ドアを開けると、ペットホテルから戻ってきた、又八郎さんがするりと外へ現れました。彼は、この席では毎年恒例になっています。
「あ、又八郎さん」三奈月さんがふんわりと、彼を抱き上げました。彼女の腕の中で、一声あげた又八郎さん、肩の上を乗り越えて地上に下りると人気の無いほうへと歩いていってしまいました。
 一通り、酒席も人も揃って、さあ、始めようというとき、
「タタさん、有川は?」
「あ、忘れてました」
「おいおい」
「冗談ですよ」そう云って、携帯電話を取りだします。有川くんに電話をしている中、鶴川さんの号令でお花見が始まりました。すでに辺りはずいぶん暗くなっています。ライトアップされた桜を見て、なんとなく、感想を述べ、盃・コップを口に運びます。
 普段、あまり話す機会のない人たちも多いので、このときばかりとあちこちで不思議な組み合わせの輪が見られます。そんな中、「田中さん、有川はいないのですか」と、彼の同期の男の子から云われました。いまの電話で引き上げてきていいと云ったのですが、もう少し時間がかかるでしょう。
 宴たけなわとなったあたりで、
「だれか、携帯鳴ってません?」近くの人たちがそれぞれ、自分の携帯電話を確認しました。手を上げて、電話を耳にしたのはタタさんでした。
「誰からです?」三奈月さん、又八郎さんに卵焼きをあげながら訊きます。客先からで、どうもくだんのシステムがうまく動いていないのでは、という問い合わせでした。すぐに、会社に電話をしてみますが、やはり、誰も出ません。どう考えても有川くんは、嬉々としてこちらに向かっているでしょう。

「マジですかぁ」有川くんさすがにげっそりです。
「PC 持っている?」タタさんが訊きますが、彼は首を振ります。
「Pilot はありますけど、」ポケットから出します。それなら、自分も持っていると、タタさんも出して見せます。
「モデムはあるでしょう?Newton キーボード *1 で作業できないですか」
「あのですね、モデムつなげたら、キーボードは付かないですよ」なるほど、その通りです。他の皆さんにも、大声で問いかけたのですが、技術者がこれだけ揃っているにもかかわらず、誰も持っていないようです。鶴川さん、高原さんも、今日に限って会社に置きっぱなしです。
 結局、どうしたかというと、Pilot と、Pilot モデム、タタさんの携帯電話を借りてそれぞれを接続します。Palmscape *2 ProxiWeb *3 で Web の状態をチェックして、PalmTelnet *4 でサーバのプロセス、設定を見直します。telnet の入力はひたすら Graffiti です。いかに有川くんでも、辛いところ。
 しばらく、見てみましたが、問題はないようです。クライアント側の、ブラウザか、キャッシュの問題かと思われます。そのようにタタさんが連絡を入れました。少し話して、お客さんも納得してくれたようで、無事に終わったこととなりました。

 ビールのコップをやっと手にした、有川くん。いつもはそんなに飲まない彼なのに、一気にそれを空けました。
「ああ、美味い」泣きそうです。
「おつかれさま」そう云って、タタさんが次を注いでくれます。全員きちんと揃ったということで、今度はタタさんの音頭で乾杯をします。
「ちょっと待った」誰かと思えば、高原さんの旦那さんが昔のよしみで参加です。もともと、タタさんたちと同期入社だったので、見知っている人も多いのです。
 盛り上がり、そして、少し声のトーンが下がってきたあたりで、高原さんがとっておきのワインを川から上げてきました。こればかりはと、いつもの面々で輪になって、カップではなくグラスへ注ぎます。小さな音で、グラスを合わせたつもりでしたが、紙コップしかないはずの中でその音は目立ったようです。好きな人たちがあっという間に集まってきてしまいました。
 タタさんはその中からグラスをもって逃げ出すと、桜の木を見上げました。やっと、花と対面した気分です。見ると、ワインな人たちの横で、有川くんがもう横になってしまっています。
「おつかれさまです」気が付くと隣に、三奈月さんと又八郎さんがいました。又八郎さんは彼女の肩に頭を乗せて、少しまどろんでいる様子。あちこちで、アルコールをいただいたのでしょう。
 三奈月さんも、頬がほんのりと染まっていて、いつもの彼女とはまた、違って見えます。
 花びらが一枚、彼のグラスの中に落ちました。ふたりしてそれを見て、笑みを交わすと、タタさん、それを赤い液体と一緒に飲み干してしまいました。

◇ ◇ ◆

-- 註
*1: Pilokey を使用すると、Pilot でキーボード入力が可能になります。IKE SHOP販売。
*2: おくさんが作られた、テキストWebブラウザです。フォームの入力、ブックマークなど高機能。
*3: Pilot のグラフィカルWebブラウザです。TGWingman の後継です。ProxiNet, Inc 作成。
*4: telnet クライアントソフトです。
<-->

がんばれ、三奈月さん
連載7 (Ver1.0)

◆ ◇ ◇

 ノックの音に振り返ると、仁くんが暗い顔をして立っています。
「姉ちゃん、ごめん」
 それが、事件の始まりでした。
 三奈月さんの PC は、電話線の都合で居間に置いてあります。結果的に家族の共有物となっています。一番使用率が高いのはやはり、仁くんです。もともとは、あまり興味が無かったのですけど、姉が使っているのを見ているうちに興味を持ったようです。最近では、Pilot 用のゲームを拾ってくるようになりました。
「どうしたの?」
「消しちゃった」「なにを?」
 聞いてみると、三奈月さんの宛のメールを誤って消してしまったそうです。
「また、どうしてメールなんて立ち上げたの?」
「だって、電源入れたら勝手に立ち上がって、つなげに行くんだもん」
 どうやら、この前にインストールしてみたメールソフトのインストーラが、勝手にそのようにセットアップしてしまったようです。仕方がないので、マシンの前に行ってみます。再度、そのメールクライアントで接続してみますが、デフォルトで「サーバから消す」ように設定されていた模様です。
「勝手に接続したのは分かるけど、どうして消えちゃうわけ?」
「なんか、やっている最中に止まったの」ソフトがフリーズしてしまったみたいですね。
「でも、落としてきたメールは2つだと思ったよ。ひとつは分かんないけど、もうひとつは覚えてる」
「なによ、勝手読んだの?」
「しょうがないよ見えたんだもん」
 どういう内容かというと。
「ええと、確か。日曜日は大丈夫かなぁ、とか。大丈夫だよね、とか」
「日曜日?」
 今度の日曜日は、すでに予定は決まっています。客先の意向で休日にメンテナンスをして欲しいということで、例外的に対処することになっています。つい、今日の午後に打ち合わせをしたところです。その件では、有川くんと三奈月さんが事にあたることになっています。ですから、彼が改めて、今更、そんなあいまいなメールを送ってくるわけはありません。
「そうそう、イニシャルが書いてあった」
「イニシャル?シグネチャじゃなくて?」三奈月さんの受け取るものはほとんど、シグネチャ付きです。要するに初心者でもないかぎりは付けるものですし、そういう人に心当たりもないようです。
「『T』だったとおもうけど」高原さんでしょうか。でも、約束をした覚えもないです。
「ううん、T がふたつだった様な気がする・・」

 次の日、三奈月さんはいつもの通勤電車の中で、Pilot を手にしています。Address を見ているのですけど、何度見ても『ふたつのT』に該当するのは一人だけです。田中太郎さん、タタさんです。
 タタさんが、三奈月さんに「日曜は、あいている?」という意味のメールを送るということは、彼女にとってはただ事ではありません。しかし、それならそれで普通にメールしてくればいいのに、なぜイニシャルで、なのでしょうか?意味深な感じを持たせたかったということなのでしょうか。タタさんの人柄に合っていないように思われます。
(本当に、彼なんだろうか)
(ああ、よりによって、なんで日曜なんだろう。有川さんに聞いていないのかな)
(こうなりゃ、踏み倒してでも。そっちへ行こうかな)
 考え方が、暴走気味になってきたところで駅に到着しました。そこから、会社までの距離はそれほど無いのですが、三奈月さんふらふらと、ちょっと危なげに歩いていきます。このところの、タタさんとの会話を思い出してみますが、特に変わった点は思い出せません。
「どうしたら、いいんだろう」つぶやいてみますが、答えはもちろん返ってきません。
「おはよう」
 背後から、声がしました。タタさんです。
「あ、と、おはようございます」かろうじて答えます。タタさん、怪訝そうな顔をして三奈月さんをじっと見ます。
「暑いの?寒いの?顔が赤いですよ」
「あ、あの、田中さん、お訊きしたいのですけど」
「はい」
 今日の、三奈月さんいつもと違って勢いがあるようです。
「・・・」しかし、すぐに言葉が出てきません。
「おっはよう。どうしたの、朝っぱらから立ち話?なになに」
 高原さんです。
「うん、どうしたの」タタさんに問われますが、こうなってはどうにもなりません。いえ、と言葉を濁して歩き始めました。

 その日いちにち、三奈月さんは仕事に身が入りませんでした。何と云っても、その肝心のメールを彼女が見ていないのですからどうにも仕方がありません。ディスプレイの向こうに見えるタタさんをちら、と盗み見ては、ため息をつきます。
(どうしよう、思い切って訊いてみようか)
 と、考えたのは今日何度目のことか。
「じゃあ、行ってきます」見ると、タタさんがカバンを手に出掛けようとしています。思わず、立ち上がって近くまで歩いて行きます。
「おでかけですか?」と訊くと、タタさん Pilot をポケットにしまいながら答えてくれます。
「はい、これからちょっと遠くまで行ってきます。今日は戻りませんから。では、来週」そう云うと彼女と、他の人たちに会釈をして出ていってしまいました。
(日曜って、来週かなぁ)考えます。しかし、皆さんの前ですから、そのままを受け取ることはできません。
 それから、彼に宛ててメールを出すべきかどうか、また、しばらく煩悶します。いえいえ、携帯電話へかけるというのが一番手っ取り早いです。その辺りを何度も思考しているうちに、外が暗くなってきました。
「じゃ、三奈月さん、申し訳ないけど日曜はよろしくね」と、声がかかりました。
「はい」と答えます。
 有川くん、メンテナンス日の確認です。うなずく彼女へ続けて云います。
「そうだ、多分、短いメールが行ったと思うけど」
「は?」
「その、日曜のことで。行っていないならいいんだけど。PaPi-Mail *1 を試していたら、なんか古いメールまで送っちゃったみたいでさぁ」
「・・・『日曜日は大丈夫?』っていうやつです?」
「そうそう、やっぱり行ってた?ごめんね、消したつもりだったんだけど、OutBoxに残っていたらしいんだ」
 はあ、相づちを打ちますが、半分上の空です。じゃあそういうことで、と有川くん、帰って行ってしまいました。
 結論から云うと、あのメールは有川くんが時間的に誤って送ってしまったもののようです。そう思えば、確かにシグネチャが無いのが腑に落ちます。それにしても、イニシャル『T』というのはどこから来たのでしょうか?しばし、考え込みます、そして、答えがなんとなく見えてきました。
 おそらく、こんなメールだったのではないでしょうか。

『日曜日は、大丈夫だよね。よろしく (T_T)』

◇ ◇ ◆

-- 註
*1: システム・エンジニアリング・サービス 株式会社 作成の高機能な mailer です。
<-->

Profile

ウェブページ


today: / yesterday:

twitter / kuraku

    Wassr

    最近のブックマーク